# interview

bounce (Oct '96)

Interview & text by Masaaki Kobayashi(小林 雅明)

フォクシー・ブラウン&リル・キム
グラマラスでセクシーなヒップホップ・シスターズにドキッ!!

ナズやジェイ・Zへの客演でヘッズにも人気爆発のフォクシー・ブラウン。
ショーン・パフィー・コムズのサポートでオゲレツ路線爆進中のリル・キム。
新たなヒップホップ女性上位時代を築くのは、キュートで大胆なこのふたり!



「シャネルをよく着るわね。グッチ、ノーマ・カマリも。ドルチェ&ガッバーナも好きだわ」。いましたよ。こんなところにもシャネラーが。 しかも、彼女はラッパー、名前はリル・キム。21歳。一方、なぜかグッチの紙袋をかたわらに置いて、うれしそうに写真に写っている姿が たびたび雑誌に掲載されているフォクシー・ブラウン。19歳(?)。こちらもラッパーだ。スポーツ・ブランドなんてもう卒業、やっぱし、ヨーロッパの 一流ブランドに限る、というわけだ。

「わたしに彼氏がいるかって?音楽がわたしの彼氏よ。他に頼れるものなんてないわ。それに音楽はずっと変わらない存在でしょ」。 LL・クール・Jの"I Shot Ya (Remix)"への参加を機にデビューを果たし、親友ナズの『It Was Written』にもフィーチャーされていた、 いかにもフォクシーらしい答えだ。モブ・ディープ、メソッド・マン、ジェイ・Zなどをフィーチャーした待望のデビュー・アルバムのタイトルにも なった彼女の別名<イル・ナ・ナ>も、ナズが名付けたものである。

また、リル・キムは、ノトーリアス・BIG(別名ビギー・スモールズ)の舎弟軍団ジュニア・マフィアの一員でもある。「あたしは、 とっても小柄だけど、主張や性格がすごくハッキリしてるから<ビッグ・ママ>。それにジュニア・マフィアの紅一点だから<クイーン・ ビッチ>って名前もあんの。あたしがクイーンで、他のみんなはキングってわけ」。昨年、彼女は"Player's Anthem"、今年は "Gettin' Money"なる、かなり主張のハッキリしたヒット曲を放っている。好みの男性のタイプは「長身で、感受性が豊かな人。しっかりしてて、 気前が良くて、よく気がつく、ハードコアな人。つまり、ホンモノのバッド・ボーイってことね…ア、ハ、ハ」と笑う彼女。そこで、金持ちで愛情がない 人と、おカネはないけど愛情のある人のどちらを選ぶ?と訊いてみたら、「お金持ちで、愛情のある人よ!!」との答え。おまけに最新 シングル"No Time"にも<あたしに何をしても、何を言っても、あたしを押さえつけることはできないの。あたしはずっとおカネを稼いでいくわ、 そんなビッチでいたいの。なめんじゃないわよ>というメッセージが盛り込まれているそうな。

ところで、フォクシー・ブラウンとリル・キムだが、この二人は、すでにトータルの"No One Else (Puff Daddy Remix)"で共演を果たしている。 アメリカのマスコミは、この二人を敵対するライヴァルとして書きたてることが多いが、実際には、二人とも互いの違いを認識し、 才能を認め合っている。94年にブルックリンのタレント・ショーでフリースタイルを披露して注目された直後に、今年のデビュー作で 吸う曲のプロデュースを手がけたトラックマスターズと知り合い、本格的にラップを始めたフォクシー。そして、「インスピレイションという点 では、ビギーによるところが大きいわね。4年前から、ずっとライムを書いてるの」と語るキムも、ライムはすべて自作である。トータルの 曲で、フォクシーは<Ill Na Na likes Benihana steak>というフレーズを書き、日本食(紅花ステーキ)への興味を示しているが、キムの"Spend A Littile Doe"には、日本人ですら予想だにしなかった一節が飛び出す。<南無妙法蓮華経>とお経をよむのである。「(仏教には)そんなに 興味ないわ。あたしには、あたしの神様がいるから。あれはアイク&ティナの映画<ティナ>から取ってきたのよ」。

ところで、映画といえば、くしくも二人のアルバムは映画を意識したイントロで始まっている。そもそも、フォクシー・ブラウンという名前自体が、 巨乳女優パム・グリア(現在日本で公開中の「エスケープ・フロム・LA」にもカルトな役回りで出演している)が完全無敵の女性を演じた、74年の ブラック・ムーヴィーの古典「Foxy Brown」から取られたものであるのは、本人も認めるところだ。そんなこともあって『Ill Na Na』は、彼女と同じヴァイオレイター・ エンターテインメントに所属する二組の新人、クルーとコーメガ(ナズ、フォクシー、AZからなるクルー、ファームの一員でもある)の 曲のさわりの部分だけを"Intro"で予告編のように聴かせてから、本編が始まるという構成になっている。なるほど、これはよくわかる。

問題はリル・キムの『Hard Core』のほうだ。「"Intoro In A-Minor"は、ある男の人(恐らくアルバムの仕掛け人ショーン・コムズ本人)が ポルノ映画館に行って<リル・キム・ハードコア>っていう映画を観てんのよ」。なぬー、ハードコアはハードコアでも、ラップとポルノじゃだいぶ違うぞー。 でも、「"Intro In A-Minor"はアルバム・タイトルとは関係ないわ。リスナーにこれから始まるのが<保護者の指導が必要>なものだって心の準備をしてもらうため なの。あたしのハード・トゥ・ザ・コア(根っからハード)な面を知ってもらいたいし〜」。すでに目にした人もいるかもしれないが、このアルバムの 宣伝用のポスターで、キムはアニマル・プリントのビキニ姿で中腰のまま、こちらを向いてお股を広げている。「あたしは、カメラの前でも、 自分の思い通りのことができるってことよ。自尊心を正当化してるの」と、そのコンセプトについて語っている。しかも"We Don't Need It"の サビでは、自ら<××ちゃん(=clits)なめてくれない男なんていらないわよ>と言う始末だ。彼女にとってはビッチやファックどころか、ディックや プッシーなんて言葉は当たり前。こちらが、そんなことをおおっぴらに言って恥ずかしくないのか、と訊けば「ノー!」の一言。筋金入りのビッチです、 リル・キムは。

とはいえ、この二人にも、理想の女性像というものはあるのだろう。フォクシー・ブラウンは言う。「なんでもスムーズにすすめたいのよ。(映画の) フォクシーみたいに。彼女はニガーを牛耳ってたでしょ。彼女には誰も手出しできなかったし、彼女のおカネ、それに、彼女の大切なものは 奪えなかったわけだし」。映画の中のフォクシー・ブラウンは、彼氏と弟を殺されたことから、男どもを操りながら、自らも捨て身で組織に対する 復讐に挑むのだ。この発言からも、イル・ナ・ナにとって、彼女が理想の女性であることは間違いない。一方、リル・キムは、またも爆弾発言だ。 「強い女の人よ。メアリー・J・ブライジ、アレサ・フランクリン、イヴァナ・トランプ、デミ・ムーアなんかね」。フォクシーも"Holy Matrimony"で、 メアリー・Jの"I Love You"にて使われたアイザック・ヘイズ"Ike's Mood"をサンプリングしているから、メアリー・Jが好きなのかもしれない。 その一方、キムは世界の大富豪トランプの奥様の名前まで挙げるとは…。彼女のライムにはたびたび<シャンパンをすすって>という フレーズが出てくるし、実際に「シャンパン、だ〜い好き」だそうだが、ここまで徹底した<とにかくおカネが一番大切なのよ>的思想には、 巷のコギャル、マゴギャルたちも敬服するに違いない。

欲望とカネが渦巻く96年ヒップホップ界からアルバム・デビューを果たした二人の女性、成人指定のハードコア・ポルノなラッパー、リル・キム と、ソフィスティケイトされたハードコア・ラッパー、フォクシー・ブラウン(パム・グリア同様、彼女も巨乳)。あなたはどちらがお好みかな?彼女たちの 曲の中に、ブランド名がいくる出てくるか数えてみよう。