# interview

blast (Aug '00)

インタビュー:ロバート・マリオネット、翻訳:川原真理子

LIL' KIM
ET DIEU...CREA LA FEMME

ニュー・アルバム「ノトーリアスK.I.M.」をリリースしたリル・キムに肉迫、彼女の現在の心境を訊いた。 不幸な少女時代からビギーとのあれこれ、フェイス・エヴァンスとの確執まで、裸のキムがすべてを語る



(中略*後日掲載します)

ヒップホップの夜明けである1980年にフラッシュ・バックしてみよう。6歳になるキンバリー・ジョーンズが、ママのベッドルームで黒人のバービーで 遊んでいるところを想像してみてほしい。黒人のバービーは、ブルックリン、ベッドフォード・スタイヴェサントの両親のアパートにある、人形とアクセサリーの マルチ文化コレクションのうちの大きな部分を占めている。母親の化粧品を塗りたくった彼女は、ファッション雑誌のページをめくり、モデルの 目や唇を切り抜いている。そして鏡の前に立ち、切り抜いた目を自分の目に、唇を自分の唇にあてる。そこから始まる。キンバリー・ジョーンズが リル・キムを発見するのだ。

その彼女がアパート中で踊り、ラジオから流れてくる曲を大声で歌っているところをキムのいとこが見て、「彼女はきっと成功する」と彼女は予言する。 スポーツの才能にも恵まれたキンバリーは、ブルックリン、フォート・グリーンにあるクイーン・オブ・オール・セインツ・カトリック・スクール在学中に、 コルゲート・ウーマンズ・ゲーム・コンテストでメダルを受賞する。母親のルビー・ジョーンズはファッションに気を遣うデパートの店員だが、紅一点の キムがいとこや兄弟と走り回っているのを憶えている。「彼女はいつだってしっかりしていたから、彼女から離れることを心配したことなんかなかったわ。 自分のことは自分で面倒が見れることがわかってたから」

父親はメンバーズ・オンリーのジャケットにマーク・ブキャナンのレザー製品が趣味の男で、家族を扶養する者、厳格な人だった。「あたしが赤ちゃんの頃の 父はすごく優しかった。父が家に帰ってくるとよく父の腕に飛び込んだものよ」、今ではほとんど口をきかない男についてキムは思い起こす。

離婚が家族を引き裂く。キムと兄は感情面で自らを守らねばならない。ルビー・ジョーンズ曰く、「経済的なゆとりはなかったけど、別れるか 正気を失うかのどちらかを選ばないといけなかった」。ルビーは無常な人生を送ることになる。キムをかかえ、車やソファからソファへの生活を送る。 そして友達と共にニューヨークはニュー・ロッシェルに落ち着くと、キムはジェファーソン小学校へ通うようになるが、そこのクラスは大半が白人で、 黒人はわずかしかいない。キム曰く、「偏見を持った人達がまだいるんだってことがその時わかったの。でもあたしは恨みなんか抱かなかった。 成績が良かったんで残るよう勧められたけど、1年後にやめてしまったの」。

その後まもなくして、父親がキムを引き取ることになる。自分自身を責め、自尊心と闘っていたルビーは、悪い仲間と付き合うようになり、マーヴィン・ゲイや グラディス・ナイトなどのハイな音楽で自分を見失っていく。キムは怒りながら父親の家に帰り、よく自分にこう言い聞かせる。「自分の物語を 語ってやるわ。そうすれば気分が良くなるでしょう。あいつはあたしの頭がおかしいって思ってたけど、あたしは自分の頭がおかしくないことを知ってたわ」

そこにはかなりの緊張感が。ある時二人が言い争っていると、キムの父親が彼女を売女呼ばわりする。その言葉は彼女の心を深く傷つける。

点灯する警察のサイレンの明かりが窓中を踊っている。キムの父親は座ったまま血を流し、他人となってしまった娘を見つめている。 二人はケンカをしていた。取っ組み合いの最中に、彼女はハサミを取出して父親の背中を刺す。キム曰く、「警察が来てこう言ったの、『そうだな、 彼女をどうしたい?施設に入れることもできるよ』。正直言ってあたしは、父親から逃げたかったからこう言ったの、『あたし行きたい』。 父親はすごく悲しそうだった。本当に泣きだしそうだったわ。そして警察にこう言ったの、『いいや、こっちで面倒みるから』」

キムの父親と彼の新しい妻は彼女をセラピストのところへ連れていく。その白人のセラピストの質問から、彼女は人種差別の匂いを嗅ぎ取る。 「あたしは言ってやったの。『あのね先生、あなたのこと好きじゃないわ』ってね」。父親が彼女をたしなめると、彼女は彼を罵る。「あたしのしたことは とんでもないことだって言う人もいるでしょうけど、あたしが馬鹿な娘じゃないってことを父親にわかってもらう方法を他に知らなかったのよ」、彼女は言う。

80年代後半。年上の娘達がキムを外へと連れ出す。誰かの誕生パーティーなんだろうと思うキムだが、代わりに彼女がいるのはマンハッタンのラテン・クォーター にあるナイトクラブ。年は足らないが年上のハスラー達に歓迎された彼女は、マイク・タイソンや一流の取引で金持ちになっている若き資本主義者ご用達の 悪名高きハーレムの洋服屋、ダッパー・ダンで仕立てられた厚手の金色のローブや、特注のルイ・ヴィトンやグッチ・スタイルのレザーに 身を包んだ連中を目にする。キムと年上の娘達は大金を扱う連中とつるむ。彼等はロールスロイスを動かし、魅惑的なニガーがやってくる定刻過ぎの 場所をうろつく。

キムは家を出て、パナマ人のボーイフレンドと暮らすようになる。彼女は自分自身に語り続ける。「これまでずっと心の中からの声を感じてるの」、彼女は言う。 「あれはきっと神様があたしに話しかけてくれていたのに、あたしは聞いてなかったんだわ。あたしは荒れてたから、自分がやらなきゃいけないと思ったことをしてたのよ」

ハスラーとしてのキムのレッスンが始まる。「世話をしてくれる男はいつもいたわ」。彼女は思い出す。「たまに、もっといい男がゲットできると 思ったら、そいつと寝たわ。そういうやり方に慣れちゃったのね」。彼女はボーイフレンドを次々と変えては、苦しい経験をして学んだり、裏切られたりする。

黒髪で茶色の目をした、胸がぺったんこでチョコレーソ色の肌をしたキムが、マンハッタンにあるブルーミングデイルの店員としての仕事を終えて、 ブルックリンのフルトン・ストリートにある家へ帰ろうとしている姿を想像してみてほしい。そしてハスラーとしての人生のみならず、彼女の人生そのものを変えてしまう 男と彼女は出会う。セント・ジェイムス・プレイスにある酒屋の前に置いてあるゴミ箱に座っている若きクリストファー”B.I.G.”ウォレスが彼女と会話を始める。 「あたしたちはそこで話をしていただけ。彼はあたしがいつも話しかけてたような男とは違ってた。あたしはいつもお金でニガーと付き合ってたけど、彼には自信と いうものがあった。あとになって、彼はあたしにライムをさせたの。そしてライムし終わると彼はこう言ったわ、『おまえは最高だぜ。二人で金儲けしようぜ』ってね」

キムはノトーリアスB.I.G.を父親のように慕っている。「まさにあたしが望んでいた関係だったのよ」、彼女は言う。「ビギーはあたしに鍵をくれたけど、 こんなこと他の女にはしてないんだって思ってたのを憶えてるわ」。彼女は彼の母親のアパートの小さな角部屋にあるツイン・ベッドで彼と眠る。 「一緒に横になって、次の日に何をしようかって話をするのよ」

95年になると、キムのためにビギーの計画の表明が明らかになる。B.I.G.と元ドラッグ・ディーラー改め音楽エグゼクティヴとなった ランス”アン”リヴェラは、キムの最初のグループ、ジュニアM.A.F.I.A.を結成し、後にゴールド・ディスクとなるアルバム「コンスピラシー」を アンディーズ・レコーディングス/アトランティック・レコードからリリースする。プラチナ・スマッシュ・ヒット”ゲッティン・マネー”やゴールド・ヒット ”プレイヤーズ・アンセム”における彼女のパフォーマンスは反響を呼び、リヴェラとB.I.G.は彼女のソロ・アルバムを作ることにする。

(以降略*後日掲載します)